「ものづくり県」として一層の飛躍を目指し、多様な産業が集積している富山県では、地域産業を支える7つの信用金庫が地元経済の活性化に貢献しています。7つの信用金庫では、2013年にBCP(事業継続計画)対策とトータルコスト削減を目的に、情報系システムを富山県内のデータセンターに集約し、サーバーの共同化と共同運用を推進してきました。また、業務効率化と導入・運用コスト削減のために、グループウェアも一括して採用してきました。そして、グループウェアのサービス終了に伴い、さらなるDX推進とFTF業務メールの円滑な運用を目的に、DEEPMailとPOWER EGGを連携させたシステムを構築しました。
富山県内7つの信用金庫が連携してデータセンターを活用
富山県内には、富山信用金庫、高岡信用金庫、新湊信用金庫、にいかわ信用金庫、氷見伏木信用金庫、砺波信用金庫、石動信用金庫の7つの信用金庫があり、地元経済の活性化に貢献しています。7つの信用金庫は、2013年にIDC作業部会を共同で立ち上げて、県内のすべての信用金庫の情報系システムを一つのデータセンターで集中管理する、という全国初の取り組みを推進してきました。当時の取り組みについて、IDC作業部会に参加している富山信用金庫の事務部で担当部長の福岡 秀成氏は、次のように振り返ります。
「東日本大震災以降、金融機関はBCP対応の要請を受け、各信用金庫で導入していた情報システムを継続的に安定して運用するためには、サーバー環境の耐震強化や電源補強などの設備投資が必要でした。加えて、各信用金庫の情報システム担当者も減少していくと予測されていました。さらに、新たなシステムを各信用金庫で導入していくと、導入コストが高額になり運用負荷も増加します。そこで、外部のデータセンターを利用してサーバー運用の設備コストを抑えると同時に、7つの信用金庫が共通したシステムを採用することで、IT関連の導入コストを低減し業務効率を向上できると考えたのです」
富山信用金庫
事務部 担当部長
福岡 秀成氏
グループウェアの更新で注目されたDEEPMail選定のポイント
IDC作業部会で、2025年度の委員長を務めている高岡信用金庫のシステム部 次長の小川 誠氏は、DEEPMailが採用されるまでの背景について話します。
「DEEPMailが導入されたのが2024年度で、私が委員長になったのが2025年度からなので選定には関与していないのですが、前任者から引き継いだ話によれば、過去にIDC作業部会で選定して各信用金庫で活用していたグループウェアのサポートとサービス提供が終了となり、それに代わる新たなシステムが必要になったのだと聞いています」
グループウェア変更の選定に加わっていた福岡氏は「新しいシステムの選定にあたっては、以前に利用していたデータなどの資産を継承できることと、各信用金庫がDXを推進するための機能が充実している点が重視されました。それに加えて、信金業界の『FTF業務メール』との連携が必須でした」と補足します。なお、FTFとは信用金庫の原点であるFace To Faceの略称です。
FTF業務メールとは、信用金庫の業界で構築されているセキュアなネットワークから配信されるメールサービスです。全国の信用金庫と関連団体に機密性の高い業務情報や業界に関する情報を発信しています。具体的には、業界全体の施策、監督官庁からの通知、システムに関する連絡など、信用金庫業務に関わる重要な情報が送られてきます。
福岡氏は「グループウェア選定の段階では、3つのシステムが比較検討されました。その中で、グループウェア、汎用申請ワークフロー、Webデータベースなどの機能が充実しているPOWER EGG (パワーエッグ)が選ばれました。しかし、POWER EGGには一つだけ課題がありました。それがFTF業務メールとの連携でした。そこでDEEPMailをPOWER EGGと連携させるという提案をもらいました」と説明します。
高岡信用金庫
システム部 次長
小川 誠氏
DEEPMailとPOWER EGGの連携でFTF業務メール対応を実現
統合型コラボレーションツールのPOWER EGGは、100を超える金融機関に導入されています。金融機関向けの業務テンプレートが充実し、ノーコードで業務アプリが構築でき、業務効率化やペーパーレス化を通してDX推進に貢献しています。一方で、POWER EGGのグループウェアには、ユーザー同士が情報共有や議論に活用できる「社内メール」機能は提供されていますが、外部のメール配信と連携する機能は装備されていません。
にいかわ信用金庫の事務部 副部長でPOWER EGGの選定にも関与していた髙櫻 将人氏は、DEEPMailが注目された経緯を次のように振り返ります。
「以前のグループウェアには、外部のメールと連携する機能が備わっていて、FTF業務メールを受信して各信用金庫で用意している受信IDに自動的に振り分けていました。振り分けられたFTF業務メールは、担当者が信用金庫内の関連部署や役員に伝達していました。しかし、POWER EGGの 『社内メール』機能では、そうした運用ができないため、システムを推奨してきたITパートナーからDEEPMailとの連携を提案してもらいました」
ITパートナーによるDEEPMailとPOWER EGGの連携は、図1のようになっています。配信されたFTF業務メールはDEEPMailが受信して、連携したPOWER EGGのアカウントに配信されて、担当者が画面で確認できます。
にいかわ信用金庫
事務部 副部長
髙櫻 将人氏
DEEPMailが受信したFTF業務メールの活用
DEEPMailとPOWER EGGの連携により実現されたFTF業務メールの運用について、氷見伏木信用金庫の業務部 事務管理課 次長の鍜治 智成氏は、次のように説明します。
「DEEPMailで受信してPOWER EGGに配信されたFTF業務メールは、担当者が対応しています。具体的には、POWER EGGのファイル管理機能を使って、FTF業務メール用の回覧用フォルダを作成し、そのフォルダに受信したメールを入れて関係する役職員に案内しています。関係役職員は、フォルダが更新されるとNaviViewにアシストメッセージを表示する設定をすることで、メールの見逃しがない様に情報共有を図っています。」
新湊信用金庫の業務管理部で次長を務める廣川 睦氏は、DEEP MailとPOWER EGGの連携について現状の取り組みを話します。
「コストやグループウェアとの連携という点で、IDC作業部会での 意向には賛同しています。ただ、当信用金庫では、以前のグループウェアに慣れている役職員が多かったため、DEEPMailとPOWER EGGの連携は検討段階です。今後、他の信用金庫での活用事例などを参考に運用を検討していきます」
POWER EGGの機能を使いこなしている髙櫻氏は「DEEPMailで受信したFTF業務メールがPOWER EGGに送られてきたときには、担当者がどこの部署で必要になるかを判断して、コメントに何部宛か記載して関係者が閲覧できる共有フォルダに保管するようにしています。フォルダ名を部署名や内容別に作成することで、関係者が閲覧しやすいように工夫しています」と利用方法を話します。
石動信用金庫の業務部 部長代理の新谷 健悟氏も、DEEPMailによるFTF業務メール受信を次のように評価します。
「以前のグループウェアから切り替えても、問題なくFTF業務メールを受信しているので満足しています。ただ、POWER EGGをまだ使いこなしていないので、業務の効率化やペーパーレス化などの推進に活用していきたいと考えています」
氷見伏木信用金庫
業務部 事務管理課 次長
鍜治 智成氏
新湊信用金庫
業務管理部 次長
廣川 睦氏
石動信用金庫
業務部 部長代理
新谷 健悟氏
金融機関のDX推進に積極的に取り組んでいく
DEEPMailとの連携以外のPOWER EGG活用について小川氏は「汎用申請ワークフローは、すでに30~40くらい作成しています。例えば、間違って端末をロックしてしまったときなどに、ロック解除のための申請をワークフローで対応しています」と成果を語ります。
砺波信用金庫の執行役員で業務部 部長の坂田 勝彦氏は、7つの信用金庫が同じシステムを導入しているメリットについて、次のように評価します。
「同じシステムを同じ時期に導入することによって、使い方がわからないときに教えてもらったり、活用事例など有益な情報を交換できる点がメリットだと感じています。特に注目している機能は、汎用申請ワークフローです。複数の部署を兼任していることから、稟議書を確認する業務が多いので、電子申請を積極的に推進したいと考えています」
メール環境の今後について福岡氏は「サイバーセキュリティの関係で、FTF業務メールは閉じたネットワークで運用されていることから、今回のDEEPMailとPOWER EGGの連携が構築されました。今後は、物理分離ではなく論理分離へと発展していくときに、対応できるシステムやサービスを提案してもらいたいと願っています」と期待を述べます。
小川氏も「FTF業務メールは担当者のアカウントに集中してしまうので、振り分けなどの仕組みを検討しています。また将来的にインターネットへの相互接続や業務でのクラウドサービスの利用などが進んだときに、信用金庫の職員のサイバーセキュリティに対する意識も高めていく必要があると考えています」と今後に向けた抱負を語ります。
※記事内の所属、役職は取材当時(2025年11月)のものです。
砺波信用金庫
執行役員 業務部 部長
坂田 勝彦氏